2007年05月14日
心臓が停止した人を一般の人が蘇生する場合、従来の心肺蘇生法(CPR)よりも「胸骨圧迫」心臓マッサージだけの方が有効、とする研究結果を日本大学医学部駿河台病院救命救急センターの長尾健(Nagao,Ken)救急室長らが医学誌「TheLancet」2007年3月17日号で報告した。
「胸骨圧迫」心臓マッサージ(Circulation)とは、胸骨に両手を重ねて置き、胸が4~5cm位沈む強さで、1分間に100回のテンポで胸部を圧迫する蘇生法である。
「国際ガイドライン2005」と呼ばれる従来の心肺蘇生法(CPR:CardioPulmonaryResuscitation)では、胸骨圧迫心臓マッサージ30回ごとに、マウス・トゥ・マウスの人口呼吸を2回するとなっている。このガイドラインが2005年11月に定められる前までは、胸骨圧迫15回ごとに人口呼吸2回だった。
今回の研究は、関東地域での心臓停止状態、4068例を対象としている。一般の人が行った心肺蘇生法(CPR)の結果を調査した初めての大規模研究である。
今回の研究では、古いガイドライン(胸骨圧迫15回ごとに人口呼吸2回)に基づいて実施された。
4068人のうち、一般の人の「胸骨圧迫」のみの蘇生法を受けたのは439人、一般の人の従来の蘇生法(胸骨圧迫と人口呼吸)を受けたのは712人、2917人は一般の人の蘇生法は受けていない。
この結果、脳の障害が少なく、神経機能が良好だったのは、心臓停止から4分以内に「胸骨圧迫」を受けた場合が10.1%だったのに対し、従来の蘇生法では5.1%で「胸骨圧迫」の方が約2倍、無呼吸で心臓停止の場合でも「胸部圧迫」の方が2.2倍良好な結果を得ている。
研究チームは、成人の心臓停止の場合、胸骨圧迫にマウス・トゥ・マウスの人口呼吸を加えることの有効性の証拠は全くないと結論付けている。
米アリゾナ大学サーバー心臓センターの蘇生研究チームのGordonEwy博士らは、心臓停止時の適切な方法として、長年、人口呼吸がない胸骨圧迫法を提唱している。
Ewy博士は、「今回の研究で胸骨圧迫が血液の酸素含有量が少ない時でも身体中に血液を送ることによって蘇生率が高まることが証明された。人口呼吸でたとえ血液の酸素含有量が増加しても、その際に胸骨圧迫がないことよる血流が十分でない状態がよくないのだ。人口呼吸はかえって有害なのだ」と述べている。
しかし、Ewy博士は、小児の心臓停止、窒息による呼吸停止の時は従来の心肺蘇生法が有効だとしている。
Ewy博士は、「人口呼吸は身体的接触をいやがる人もいるだろう。技術的にも難しい。とにかく心臓が停止していたら胸部を圧迫してほしい。米国では年間45万人が心臓発作で死亡しているが、胸骨圧迫だけをする人がふえれば、もっと良い結果が出るだろう」とも述べている。