2006年08月08日
病院の救急治療室を訪れる患者の場合、その原因が、家庭内暴力がからんでいる場合がかなり多い。だが、女性の患者は、家庭内暴力の話をしたがらない。医師も、なるべく、家庭内の問題には深入りしないことが多い。しかし、医師としては、病状のもとにある問題を追求しなければ、本当の治療にはならない。そこで、患者に家庭内の悩みについて話をさせるために、いろいろ工夫する。シカゴ大学のカリン・ロード博士が工夫しているのは、コンピュータを上手く使う方法である。同博士は、救急治療室の待合室にコンピュータを置いて、患者に、治療の順番を待つ間、そのコンピュータの前に座ってもらった。そのねらいは、患者というのは往々にして、医師には話たがらないことでも、コンピュータに向かっては、正直に話すことが多いからだこのコンピュータには、8つの質問が入れてあり、患者はその一つ一つの質問に答えるように言われる。一見とりとめのない質問が並んでいるのだが、そこには仕掛けがある。例えば、「あなたは、パートナー(夫)から、あなたの家族や友達とできるだけ離れていてほしい、つまり、つき合わないように、と言われることがありますか」。 そこでもし女性が、この質問にイエスと答えると、その結果、女性は家庭に問題があると判定され、医師はすぐに手配して、その患者とインタビューする。そこでじっくりと話をすると、家庭内暴力やいろいろな問題が浮かび上がってくる、というわけだ。そして、ついには、医師や看護婦に向かって、日ごろ打ち解けて話をしないようなことでも、詳しく内情を話すようになるという。この方法によって、救急患者の約20%から30%が、家庭内暴力にからんでいる実態が明らかになった、と同博士は述べている。「救急施設を訪れる患者の多くが、家庭内暴力で悩んでいる。家庭内暴力は、表面に出にくいが、健康上でも、非常に大きな問題である。これに、十分対応できていないのが実情で、何とか実態を明らかにして、医師は治療にのぞむべきである」と博士は述べている。