2006年07月25日
アメリカでも、手術のミスが相変わらず多い。手術器具を体内に置きわすれた、体の別の部分にメスを入れた、などなど。その原因は手術チ−ムに問題があるのではないか、というわけで、かねてから手術チ−ムの改革を提唱している米ジョンズホプキンス大学(米メリ−ランド州)の外科医、マ−チン・マカリ−博士らが、16の州60の病院で、医師、看護婦、など医療従事者、病院関係者などを対象に調査を行った。その結果が、「米外科医学会誌」(Journal of American College of Suregeons)最新号で発表された。調査は、航空機の安全性を確保するためにつくられた「コックピット・マネ−ジメントのためのアンケ−ト」に沿って、行なわれた。その目的は、「チ−ムのメンバ−が、ミステ−クが起きると感じたときに、いかに自由に、かつ、迅速にはっきりものが言えるかどうか」を確かめるためである。かつて、精神状態に問題があった日航機の機長が、着陸直前にエンジンを逆噴射してブレ−キをかけ、羽田沖の東京湾に“不時着陸"するという事件があったが、こんな時、コックピット内の意思疎通が十分であれば、未然に防げたかもしれない。同じことが、手術室内でも言えるのではないか、というわだ。調査の結果、果たして、手術のミスは、チ−ム内のコミュニケ−ションに問題があった場合に起きていることがわかった。ところが、手術チ−ムのメンバ−は、必ずしも、自由に発言できないようになっている。執刀医の権力が強すぎるからだ。そこには、職分、人種、性別、などの壁が立ちふさがっている。テレビドラマの「刑事コロンボ」に、「溶ける糸」というドラマがあった。名医と評判の高い外科医が、上司の教授の心臓の手術をすることになって、この場合使ってはならない「溶ける糸」を使って、殺そうとした。それを見破った看護婦が外科医を追求すると、医師はその看護婦を、口封じのために殺す、という話だ。これはドラマであり、犯罪にからんだ話である、とはいえ、執刀医に向かって、チ−ムのメンバ−がものを言うことは、死をも覚悟しなければならない、ということを示唆している。マカリ−博士自身手術医である。「こんな調査をするということは、内心じくじたるものがあるが、調査の結果、手術チ−ムの意思疎通がいかに大切であるかがよくわかった。調査で、なにを望むか、の質問に、看護婦は、自分の発言をよく聞き入れてくれる医師がほしい、と言っているのに対して、医師の側は、決められた手順に従って、忠実に、てきぱき仕事をすすめてくれる看護婦がほしい、と言っている」と博士は述べている。