2006年05月18日
たばこをやめるための禁煙グッズに、ニコチンパッチやニコチンガムなど、ニコチンをベースにした製品がある。アメリカでは、かなり普及していて、日常的にドラッグストアで買って、使っている人も多い。ところが、2006年4月上旬、「米国立科学アカデミー紀要」(Proceedings of National Academy of Sciences)のオンライン版が報じたところによると、肺がんの治療を受けている人は、こうした禁煙グッズは使わない方がいい、という。その理由は、ニコチンパッチなどから吸収されるニコチンが、肺がん治療に使われる化学療法剤の効力を弱めるおそれがあるからだ、という。肺がんの化学療法剤は、肺がん細胞に作用して、アポトーシス(apoptosis)と呼ばれる細胞死に導く働きがある。いわば、がん細胞の自殺を促すのである。こうしてがん細胞を殺すのだが、もし、そこにニコチンがあると、がん細胞は、2種類のたんぱく質をつくって、細胞が死ぬのを守るのである。ニコチンの存在によって、肺がん細胞は自殺しなくなってしまうのだ。つまり、化学療法剤が効かなくなるのである。南フロリダ大学のシュリクマー・チャラバン氏らは、肺がんの治療に普通よく使われている化学療法剤に作用させた肺がん細胞に、ニコチンがどう働きかけるか、を実験によって調べた。その結果、ニコチンの存在によって、肺がん細胞は、細胞死を防ぐ働きがある「XIAP」、「サービビン」(survivin)という、2種類のたんぱく質を増産することを確認した。これによって、研究者たちは、化学療法剤で治療している肺がん患者は、ニコチンパッチやニコチンガムを使うと、治療効果が低下するおそれがあるから、やめた方がいい、と結論を出した。しかし、禁煙すること自体は進めるべきで、ニコチンをベースにした禁煙でなく、その他の努力で禁煙をを成功させるように、と研究者たちは勧めている。なお、この研究は、4月上旬、ワシントンで開かれた「米がん研究学会」でも発表された。