2006年04月21日
フッ素は歯を丈夫にする、と言われて久しい。アメリカはじめ、水道水にフッ素を加える国も多い。しかし、フッ素有用説を疑問視する人もいる。米国立科学アカデミー(National Academy of Sciences)は、2006年3月22日、「フッ化物(fluoride)が多く含まれる飲料水をいつも飲んでいると、歯のエナメル質の脱色や損傷が起きる」との特別声明を発表し、長年争われてきたアメリカの「水道水のフッ素論争」に一石を投じた。アメリカの水道水のほとんどに、歯の健康を考えて、フッ化物が加えられている。そのために、EPA(米環境保護局)は、水道水のフッ化物の基準を、最高1リットル当たり4ミリグラムと定めている。ほとんどのアメリカ国民は、この基準以下のフッ素が入っている水道水を飲んでいる。しかし、今度の国立科学アカデミーの声明によると、この基準に近いか、これを超えるフッ素入りの水を飲んでいる人が、アメリカには、少なくとも20万人はいて、このため、フッ素による歯の損傷が起きているという。それによると、フッ素が多い水を飲むと、フッ素が歯に反応して、エナメル質の色が変わり、歯が失われ、歯に穴が開く、といった現象が起きている、というのだ。この声明では、水道水にフッ化物を加えることの是非については言及していないが、暗に、EPAの基準を再考するよう求めている。長年、フッ素添加に反対してきた勢力にとって、この米国立科学アカデミーの英明は、強い味方となっている。アメリカにおける、フッ素添加に反対する勢力の歴史は古い。50年ほど前に、「水道水にフッ素を加えるのは、アメリカ国民に毒を飲ませて病気にさせようとする共産主義者の陰謀である」と主張するグループがあった。米政府が、くり返しこの主張を否定して、騒ぎは収まったものの、フッ素反対の動きは、全米に根強く張りめぐらされている。長年、フッ素化に反対を唱えてきた非営利団体の「環境ワーキング・グループ」(Environmental Working Group)は、「国立科学アカデミーの声明は、水道水に含まれる過剰なフッ素の害に対する懸念を、あらためて国民に想起させている」として歓迎している。