2006年02月24日
バランスを失って転倒する事故が老人に多い。CDC(米疾病管理予防センター)によると、転倒によってけがをし、救急施設で治療を受ける65歳以上が、アメリカで年間180万人に上り、2003年には、42万1000人以上が、そのために入院した。人間が、いつもバランスを保っているのは、足の裏、ひざなどの関節や足首で感じ取る圧力や接触の刺激が、脳に伝わり、視覚や平衡感覚に関係する神経と合わさって、そのシグナルが筋肉に伝えられるからだ。年を取ると、足の感覚や筋肉が弱まり、神経の伝達機能が衰え、バランスを失いやすくなって、転倒する。ボストン大学のジェームズ・コリンズ教授(生体工学)が、雑誌「神経学紀要」(Annals of Neurology)2006年1月号で、こんな研究を発表した。「糖尿病のために足がマヒした人、あるいは、脳卒中の後遺症で、バランスが保てずに、じっと立っておれなくなった人に、足裏に振動の刺激を与えてやれば、バランスを欠いてふらふらしなくなった。老人が20代の若者のように、しゃんとした」というのだ。同教授が、実験的に行ったのは、シリコンゲルでできた靴底を、電池でランダムに振動させて足裏に刺激を与えたもの。振動は、本人が気がつかないほど、非常に微弱だという。実験では、平衡感覚が衰えた高齢者を、この靴底の上に静かに立たせ、両手を腰にあて、目をつぶらせた。こうして、肩に乗せたマーカーを、上からカメラが追って、被験者な体がどれほど揺れたかを測定した。人間の動きにくわしく、コリンズ教授の研究のことをよく知っているカリフォルニア州のクレアモント大学のジョン・ミルトン博士(神経科学)は、「この研究は非常に大きな可能性を秘めている。足裏刺激で、お年寄りの転倒事故が、ほんの数パーセントでも少なくなれば、すごいことだ」と言っている。米ロードアイランド州プロビデンスにある「アフェレント社」(Afferent Corporation)が、いま、コリンズ教授の指導で、普通の靴の内底として使える製品にするために、試作品をつくっているところだという。