2005年12月07日
米国立科学アカデミーの1機関である「医学協会」(Institute of Medicine)は、「1000万人と言われる全米のがん生き残り患者は、そのほとんどが、適切なフォローアップを受けていない。がん医師は、個別的に患者の生き残り計画を立てて、治療後の手厚いケアを実施すべきである」との提言をまとめて2005年11月7日、発表した。同協会は、これまでも、医療に関する報告書を出して、アメリカの医学研究の方向づけ、医療行政に大きな影響を与えており、「がん治療後」が、これからの医療の一つの柱となると見られている。報告はまず、アメリカ人の男性の半数、女性の3分の1は、生涯に、何らかのがんになっているが、早期発見、早期治療のおかげで、がんで生き残った人たちの数は、この30年間に、3倍に増加した、ことを指摘している。さらに報告は、がん患者は、治療が終わった段階で、別のケアを始めなければならないのである。体だけでなく、心理的、社会的要求も必要になるのに、医師も研究者も、がん患者を擁護する団体までも、「治療後」に始まる健康上のリスク、あるいは、自己管理の問題を無視しているのである、と述べている。この報告のまとめ役の一人、カリフォルニア大学アービン校のシェルドン・グリンーフィールド博士は、「治療がうまく行ったがん患者は、退院すればそこで終わったわけでないことを銘記すべである。それは、健康上の新しい段階のスタートでもある。しかも、どうすればいいのか、その道しるべもないのである」と語っている。そして、同博士は、治療後のがん患者を待ち受けている問題には、まず使われた薬剤の影響が残っている場合を考慮すべきである、と言っている。例えば、がんの化学療法で使われる薬によっては、心臓に障害が起きる副作用がある場合があるので、そのチェックは欠かせない。その他、治療後、「体が不自由になる」「記憶障害が起きる」「神経障害」「性的不能、あるいは、不妊」「臓器不全」「化学療法などによって起きた美容上の変化」などの他、健康保険の問題、雇用上の問題、そして、何より、生活問題がある。そこで報告は、治療後の患者一人一人について、サバイバルケアのための計画書、を医師をはじめ、関係者が参加して、いろいろな観点から作成しておくべきである、と提言している。こうすれば、治療後の患者は、何に気をつけ、どうすればいいのかわかる。すでにこういった動きは、小児がんでは始まろうとしている。医師など小児がんの研究関係者でできている、「子ども腫瘍グループ」(Children's Oncology Group)では、治療を終えた子どもの患者のために、「長期フォローアップ・ガイドライン」を作成して、実施に移そうとしている。そこでは、まず、子どもの患者一人一人について、いつどんな治療を施したか、用いた薬の名前と投与量、その医師などの住所、連絡先、などできるだけ詳しい記録を残すことにしている。将来、再度治療をうける場合の参考にするためである。