2005年10月06日
アルコールをちょっと飲んだだけで、顔が真っ赤になる人がいる。それどころか、皮膚に斑点が出たり、頭が痛くなり、吐き気がしたり、眠くなったり、めまいがしたり、心臓の鼓動がはげしくなる。こういった症状は、特に女性に多い。新入女子社員が、歓迎会で、急性アルコール中毒になり、救急車で運び出される光景はよくある。ところが、いくら飲んでも、何ともない人もいる。また、欧米人では、こんな酒を飲んで、顔が赤くなったり、手がつけられないほど、おかしくなることはまずない。なぜか。「米国立アルコール乱用・中毒研究所」(National Institute of Alcohol Abuse and Alcoholism)によると、欧米人のほとんどの成人は、アルコール飲料は2杯分までなら、代謝できて何ともない。という。
しかし、アジア人のなかには、ほんの少量でも、顔が赤くなり、それ以上アルコールを受け付けない人がいるのは、遺伝子のためである、という。欧米人は、この赤くなることを、「アジア赤面」(Asian flush)と呼んでいる。ヨーロッパ系の人には、飲んでもこういうことはめったに起きない、ということだ。体に入ったアルコールは、まず、アセトアルデヒド(acetaldehyde)変わる。これは体に毒で、すばやく分解されて、酢酸に変える必要がある。この分解を促進するのが、「ALDH2」と呼ばれる酵素。ところが、アジア人のなかには、この酵素の働きが悪い、つまり不活性な人がいる。アセトアルデヒドを分解できない人なのだ。それは、ALDH2の遺伝子が変異を起こしているからで、遺伝子を調べればすぐわかることだ。独ハンブルグ大学のハインツ・ウエルナー・ゲイ博士が調べたところによると、「ALDH2不活性遺伝子」を持っている割合は、中国人と日本人がなんと45%、朝鮮人が35%、タイ人が10%、フィリピン人が1%だった。このように、同じアジア人でも、アルコールに強い、弱いに関係した遺伝子に大きな違いがある。欧米人では、「ALDH2不活性遺伝子」は、あってもほんのわずかで、ほぼゼロに近いという。欧米人でも、アルコールに弱い人はいるが、それは、アジア人のように、アセトアルデヒドを分解できない遺伝子のせいではなく、別の理由によるものであるという。もし、アセトアルデヒドを分解できない人が、無理して酒を飲むと、どうなるか。まず、肝臓がやられる。そして、しばしば、食道がんになることが多いので、気をつけるよう、専門家は忠告している。当たり前のことだが、飲めないのに無理して飲ませるのは、体に良くないのである。ところで、アルコールを飲めない人のための“薬”の開発がこのところ進んでいる。すぐに顔が真っ赤になる人でも、みんなと楽しく飲めるようになる、二日酔いも少ない、という触れ込みの薬だ。しかし、カリフォルニア大学バークレー校の科学者らは、こうした薬に疑問を抱いている。飲めない人に無理に飲ませることになるから、良くないというのである。サンディエゴの生化学コンサルタントのケネス・クルル教授は、二日酔いを避けるなら、ビタミンB複合剤を大量に服用すれば有効だ。が、それは一時的に効くのであって、もともとアセトアルデヒドを分解できない遺伝子を持っている人に、アルコール代謝を促進させることは不可能だ、と言っている。