2005年09月13日
機能が衰えたじん臓に代わって、血液を体外に取り出して正常化する人工透析療法は、もともとアメリカで開発され、日本でも、広く普及している。アメリカでは、約40万人の腎不全患者が、透析のおかげて、血液を浄化しながら、命を長らえている。しかし、問題も多い。その第一は、患者がその都度、透析センターまで足を運んで、他の患者にまじって、4時間も透析の機械から離れられないことだ。しかもこれを週に3回続けなければならない。健康な人のじん臓は、毎日働いている。だから、透析も、本当は週3回でなく、毎日やったほうが、健康維持のためにはいいのだが、費用や患者の負担などを考慮して、週3回がぎりぎりのところなのである。じん臓病の専門医は、できることなら、毎日、しかも、家庭で透析できるようにしたいと願っている。患者にとっても、そのほうがありがたいのは言うまでもない。そのためには、小型の家庭用人工透析器が必要になる。冷蔵庫ほどもある現在の人工透析装置を、スーツケースほどにしなければならない。それがなかなかうまく行かない。透析をするには、小さな手術も必要になる。血液を抜いたり戻したりするために、血管に針を刺すのだが、そのための手術である。これを、患者自身、ないし、家庭の人でできるのだろうか。当然、感染の心配もある。機械ができても、こういう問題もある。アメリカの医学研究の総本山であるNIH(米国立衛生研究所)では、こうした問題を解決して、家庭で安心して、毎日血液透析ができるようにする、という計画を、今年秋から、重点プロジェクトとして取り組むことにした。実はすでに、2種の家庭用透析器が、FDA(米食品医薬品局)の認可を得ている。一つは、「アクシス社」(Aksys Ltd)(イリノイ州)の「PHDシステム」で、難点は機械の重量が300ポンド(135キロ)もあることだ。もう一つは、「エヌエッチステージ・メディカル社」(NhStage Medical)の「システムワン」(System One)が昨年認可を得たばかり。こちらは「ポータブル」を売り物にしているが、それでも70ポンド(32キロ)ある。しかも、これらの家庭用透析器の試験の結果、性能にはまだ不十分な点が多く、改良の余地が多い、という。
したがって、現在ある家庭用透析装置を利用できる患者はきわめて限られている。NIHのじん臓病担当官、ジョエフィーン・ブリッグス博士によると、現在の透析器でも、4時間かけている透析時間の最初の1時間で、大部分の有害成分が除去されているので、この事実をヒントに、短時間で、家庭で透析できる機器の開発の道が開けるかもしれない、という。