2005年08月27日
精神病の治療法として、30年前まで使われていたロボトミー(lobotomy)を復活させることを考えてみたら、という提言が、7月14日付けの米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」に掲載された。ロボトミーは、精神分裂病などの治療に使われた外科的治療法で、ドリルで頭蓋骨に孔を開けて、前頭葉白質の一部を破壊して、神経経路を切断する手術。1930年代半ばから1970年代にかけて、アメリカでは一般に行われていた。精神病でも、著しい興奮、不安、妄想などを呈する症例に対して、最後の手段として適用されていたが、後年、単なる慢性頭痛の治療などにも使われるようになった。しかし、手術後に回復不能な後遺症が残るのと、その後の薬物療法の進歩のために、いまでは、ロボトミーは使われなくなった。日本でも、戦後、東大医学部の教授がロボトミーを試みて、「野蛮、非人間的」の批判を受けた。ロボトミーを最初に行ったのは、1936年、ポルトガルの神経学者、エガス・モニツ博士で、博士はこの功績で、1949年ノーベル賞を受賞した。でも、ロボトミーに対する反発は強く、とくにロボトミーのために取り返しのつかない後遺症が残ったと訴える肉親などが中心となって、その中止を訴えた。また、開発者のモニツ博士のノーベル賞剥奪を要求する運動が展開された。ノーベル委員会はこの要求を退けたが、ロボトミーをやめる医師が続出して、ついに、今では全く行われなくなった。「ロボトミー再考」を提案した「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌の論説は、「アメリカで行われたロボトミーは、1930年代から70年代にかけて、全部で約5万件にのぼったが、うち約10%の患者は症状が改善している。もちろん、ロボトミーのために、障害が残った人も大勢いるが、ロボトミーを適用するのが必ずしも適切でなかったり、技術的にも問題があった。今後さらに研究を重ね、手術法を改善すれば、ロボトミーで改善が望める患者もいるはずだ。復活を再考してはどうか。万策尽きて、病院に閉じ込められたままの精神病患者に救いの手を差し伸べる手段となりうる」と述べている。