2005年07月20日
心臓病は、病原体の感染によって起きるのではないか、と言う説は、かなり以前から伝えられている。胃潰瘍は、以前は、アルコール、コーヒー、ストレスなどにより、胃の粘膜が刺激され、血行障害が起きることが原因とされていたが、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の患者に、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)というバクテリアが見つかったことから、近年、感染症と見られるようになった。実際、抗生物質の投与で、胃潰瘍がよくなることが明らかになって、最近では、胃潰瘍の治療に抗生物質を使うことが標準的となっている。こした事例もあって、いろいろな病気の原因は、微生物の感染ではないか、といわれるようになり、その一つが心臓病である。その説を裏づけているのが、心臓を取り巻く冠状動脈に生じたプラーク(斑点)に、バクテリアが存在していることがわかったことで、このバクテリアが、心臓病の発生と関連しているらしい、と言う説が有力視されている。そこで、実際に抗生物質を心臓病患者に投与してみた試験が、2件行われ、その試験結果が、米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」最近号に掲載された。その一つの試験は、ワシントン大学のトーマス・グレイストン博士らが行ったもので、心臓病患者4000人を相手に、抗生物質、または、偽薬を一週間に一度の割合で、4年間与えてみた。試験の対象となった人たちは、いずれも、冠状動脈の病変によって起きた心不全、心筋梗塞などが起き、いまは安定している患者だった。その結果、4年間に、新たに心臓に問題が起きた人の割合は、抗生物質を与えられたグループと偽薬組とでは全く違いはなかった。第2の試験は、ハーバード大学のクリストファー・キャノン博士らが行ったもので、やはり心臓病患者4000人を相手に、抗生物質を与えた。投与方法や抗生物質の種類をいろいろ変えてみたが、結局、抗生物質の有効性は証明できなかった。