2005年07月02日
後進国と先進国との格差の一つは、医療サービスの充実度の違いである。医療の不備、衛生状態が悪い、などのため、後進国では、病気になりやすく、病気になっても満足に治療が受けられない、伝染病が蔓延すると手がつけられず、そのため、国力は衰え、いつまでも、貧しさから抜け出せない。こうした事態に対処するために、後進諸国は、医師、看護師、医療技師の養成に力を入れている。ところが、後進国が、大金を投じ、年期をかけて育てた医師をはじめとする医療従事者を、一人前になった段階で、金持ち国がそっくりいただいて、自分の国で働かせている、というのは大問題がある、と「国際移住協会」(International Organization for Migration)が、最近出した報告で指摘している。国から国への移住問題を調べている同協会は、民間組織だが、国連などと密接な協力のもとで、国際間の人の動きに関する問題の解決に当たっている。同協会が出した報告によると、アフリカからアメリカやヨーロッパに移住している医師、看護師などは、年間2万3000人に上っている。同協会の推定では、もし、先進国が、これらの医師などを自国で養成したとすれば、一人当たり、18万4000ドル(2000万円)かかる。そして、これまで、、先進国が、後進国で養成した医療従事者を働かせたことによって受けた恩恵を累計すれば、何と、5520億ドル(56兆円)にもなるという。一方後進国は、毎年、医師の養成のために5億ドル(500億円)をつかっている。同協会の会長代理、ナジオロ・ナジアエ氏は「先進国は、医師不足の穴埋めのために、後進国の医師を意図的に勧誘している。医師の流出は、とくに、アフリカ諸国に心配の種で、非常に重大な問題になっている。例えば、アメリカでは、ナイジェリア出身の医師が2万1000人いる。フランスには、ベナン(アフリカ西部の国)出身の医師は、本国より多い」と話している。アフリカで働いている医師にしてみると、先進国から高給(アフリカにしてみれば)で誘われると、どうしても気持ちが動く、という。ナイジェリアのラゴスの病院で働いているジョン・アデボワレ医師は、「本国で働くと、給料は低い、それに支払いが遅れがち、病院の施設はお粗末。そんな不満から、外国へ流れる同僚が多くなる。昨年(2004年)にも、優秀な外科医2人が、外国へ行ってしまった。その後任はまだいない。看護師の流出も激しい」と語っている。