2005年06月15日
生まれてすぐの赤ちゃんのへその緒から、スプーン一杯ほどの血液を取り出す。これが、「臍帯血で、赤ちゃんが将来かかるかもしれない、病気、例えば、白血病、リンパ腫、遺伝性の疾患などの治療に、これを輸血することで、治療に役に立つことがある。
そこで、出産時に、その血液を採取して、長い期間保存してくれるのが臍帯血バンク。いま、アメリカには、約30の私的な臍帯血バンクがあって、百万人分を超える臍帯血を保存している。その大手の一つ、カリフォルニアにある臍帯血バンク、「臍帯血登録所」(CordBloodRegistry)のスティーブ・グラント副社長によると、同社は現在27万人分の臍帯血を保存しているが、その数は年々増加の一途をたどり、大体、倍倍で伸びているという。しかし、子どもがうまれたばかりの夫婦にとって、出産時に、子どもの臍帯血を保存してもらうかどうかを決めるのは、なかなか難しい決断を迫られる。お金がががるからだ。普通、最初に、500ドルから1800ドル(5万円から18万円)の費用を払って、その後、毎年100ドル(1万円)の年経費を払う必要がある。将来、役に立つかどうか、わからないことに、これだけの投資をして割に合うのか、どうか、とだれしも考えてしまう。臍帯血バンクに預けた血液が、将来、実際に使われる割合は、1万件に1件、とも20万件に1件、ともいわれている。トレーシー・ドーンズさん夫妻は、長男のアンソニーちゃんが生まれたとき、熟慮の末、臍帯血を保存してもらうことにした。果たして、生後4ヵ月でアンソニーちゃんに、珍しい遺伝性の骨の異常が見つかり、移植が必要になった。さっそく臍帯血が役に立つ、と夫妻は思ったが、病院側は、それはだめだという。保存されている赤ちゃんの血液にも、同じ骨の欠陥遺伝子が入っているからだ、という説明を受けた。「臍帯血バンクに預けた時には、そんな説明は受けなかった」と夫妻は不満だったが、仕方がない。しかし、幸い、公的な臍帯血バンクに、アンソニーちゃんに適合する血液が見つかり、治療を受けて成功し、アンソニーちゃんは今は元気にしているという。
そこで、ドーンズさん夫妻は、私的な臍帯血バンクもいいが、広く一般の人のために役に立つ、公的な臍帯血を保存することこそ肝要だ、との感想を持った。公的な臍帯血バンクは、全米各地にあるが、保存されている血液は、6万人分ほどで、伸び悩んでいる。せいぜい保存血液を15万人分まで増やしたい、と関係者は目標を立てているが、ブッシュ政権は、2005年の連邦予算で公的な臍帯血バンクの予算を削っており、思うように行かないのが現状である。