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2005年04月08日

新説、乳がんが増えたのは夜間照明のため

本来は暗いはずの夜間に、あかあかと電気の明かりをつけて、そのなかで暮らす生活が、文明国では当たり前になった。そのために、昼間活動して夜は休む、という、人間の体内に本来備わっている「日周期リズム」(circadianrhythm)、すなわち、体内時計が狂ってしまった。それが、女性のホルモンの分泌に影響を与えた。その結果、女性ホルモンに大きく左右される乳がんが増えた、とする学説が注目を集めている。
その代表的学者である、米コネチカット大学のがん疫学者リチャード・スティーブンス博士は、「これはまだ学界で認められた説ではないが」とことわって、次のようにいっている。日の出とともに活動し、日没とともに体を休め、睡眠をとる、という日周期リズムは、長い人類の進化の歴史のなかでつくられた。そのリズムに合わせて、脳も神経も心臓もホルモンの分泌も、体のすべての器官、組織は働くようになっている。ところが、電気による人工的な明かりが普及するようになって、それまで、せいぜい、ろうそくや、たいまつ、月の光くらいしかなかった夜の世界が、昼間のように明るくなった。せいぜい150年ほど前から始まったことである。
乳がんの発生は、遺伝的要因もあるが、10中8、9は環境、ないし、ライフスタイルの影響を受けて発生するとされている。乳がんの発生は、先進国の方が、途上国より多いことがわかっている。先進国は電気の消費が多い。夜間、人工的な明かりにさらされている時間が長い。これが先進国の人たちの日周期リズム、つまり、体内時計を狂わせてしまった。そのため、女性のホルモン分泌を狂わせ、とくに先進国で、乳がんが増えている原因、と考えてもおかしくない。もちろん、この考え方は、科学的に立証された結論ではない。しかし、夜間勤務が長い看護婦は、日中だけしか働いていない女性よりも、確かに乳がんになりやすいこと、盲目の女性は、眼に異常のない女性よりも、乳がんは少ない、という事実もある。
「日周期リズムの狂いが乳がんの原因である、と私は断言しているわけではないが、いろいろな現象がその傍証になっている。光とがんの関係を解明することは、十分研究に値するテーマである」と博士は言っている。近来、なぜ乳がんが増えたのか、なぜ先進国の女性に乳がんが多いのか、については、この「光とがん」の関連以外にも、さまざまな説が出されている。発汗抑制剤(デオドラント化粧品など)の使用が原因だ、いや、ブラジャーで胸を締めつけるからだ、など諸説が出ているが、いずれも確証はない。流産や妊娠中絶が、乳がんが増えた原因ではないか、という議論があり、NCI(米国立がん研究所)では、2003年に、100人の乳がんの専門家を集めて、この問題を検討させたが、その証拠はないという結論に達した。「とにかく、乳がんが増えたからには、なんらかの要因があるはずだ。それを解明することが、予防、治療につながる。もっと研究をすべきだ」と、スティーブンス博士は主張している。