2005年03月26日
高齢者の頭の働きを若く保つにはどうすればいいのか。それは、「健康的な食事と運動、プラス、適宜頭脳を刺激すること」であることが、イヌを使った実験で確かめられた。
雑誌「加齢の神経生物学」(NeurobiologyofAging)1月号に掲載されたこの研究は、カナダのトロント大学とカリフォルニア大学アービン校の研究者によって行われた。老化によって、記憶力、認識力、判断力など、頭の働きが低下するが、その衰えかたは、人間とイヌでは良く似ている、といわれる。
アルツハイマー病の患者では、脳に老人斑(plaque,プラーク)と呼ばれる斑点ができるが、老犬でもそっくりの斑点が生じてから、ボケが始まるという。そこで、研究者たちは、老化と頭の衰えとの関係を、イヌを使って実験することを考えた。まず、8歳から12歳のビーグル犬48頭を4つのグループに分けた。イヌは大体10歳で老犬となるので、このイヌたちがすべて高齢犬だ。
第1のグループのイヌには、毎週2回の割合でよく運動をさせ、オモチャを与えて遊ばせ、小屋のなかではルームメイトと一緒にさせ、毎日“学校”に連れて行って、えさの在りかを探る訓練をした。しかし、食事にはとくに気を使わなかった。第2のグループには、毎日、抗酸化成分が多い健康的な食事を与えた。が、とくに運動をさせたり、オモチャで遊ばせたりはしなかった。第3のグループには、第1のグループの運動、オモチャ、学校の経験をすべて与えた上に、第2のグループに与えた、抗酸化物質がたっぷりの、健康的な食事を与えた。第4のグループには、運動にも食事にもとくに気を使うことなく育てた。
このように、グループによって、異なった飼育法をまる2年間続けた。それから、各グループのイヌに「えさ探し」のテストを行った。このテストは黒と白の箱があって、そのどちらかの色の箱の下に、えさが隠されている。イヌたちは、試行錯誤で、例えば黒の箱にえさがあるとわかると、黒の箱だけをあけるようになる。こうしておいて、今度は、えさを黒の箱から白の箱に変えた。えさ箱がスイッチされたことをいち早く察したイヌは、再度えさにありつけるが、それがなかなかわからないイヌ、つまり頭の働きが低下しているイヌは、えさがもらえない。この実験を。48頭すべてのビーグル犬で行ったところ、まず、健康食と運動、頭の体操すべてをやった第3のグループのイヌは、12頭すべてが、いち早くトリックを見破り、えさにありつけた、という。健康食だけで、運動も頭の体操をやらせなかった第2グループ、と、運動や頭の体操はやらせたが、健康食を与えなかった第1のグループでは、箱の色が変わったことに気がつき、えさにありつけたのは、それぞれ12頭中8頭だった。健康食も運動も与えなかった第4のグループのイヌで、トリックを見破ってえさにありつけたのはわずか2頭だった、という。「この見事な実験結果に、研究者自身が驚いています」とこの実験を担当した一人、エリザベス・ヘッドさんが話している。彼女はさらに、「このパズルが解けないイヌが、1グループに、2、3頭はいるだろう、と思っていたのですが、第3グループのイヌ全部が、簡単に解いてしまったとは見事というほかない。つまり、日ごろから、良く運動し、栄養たっぷり(この場合は野菜、果物に多い抗酸化物質)の食事を食べ、適宜頭を使うような遊びができる環境に置けば、いざという時の頭の働きが、断然すぐれていることが、このイヌの実験からわかった」と話している。加えて、この実験でわかったことは、使われたイヌがすべて老犬だった、ということから、これを人間にあてはめれば、健康食、運動、刺激は、いくら年をとってから始めても効果が期待できるということだ、と研究者たちは言っている。