2005年03月14日
男性が年を取ると前立腺がんになりやすくなるのは、女性ホルモンが減って、ホルモンのバランスがくずれるからだと言われている。
実際、男性ホルモンのテストステロンが、前立腺のがん細胞の増殖を促進することがわかっている。そこで、前立腺がんの治療に、男性ホルモンを減らすための薬剤を使うことが多くなった。しかし、男性ホルモンを抑える療法によって、お年寄りには大敵の「骨折」を起こしやすくなるという副作用がある。そのために命を縮めるケースが多い、と警告する研究論文が、1月13日発売の米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」で掲載された。
この研究を行ったのは、テキサス大学医学部(ガルベストン)のバカーン・シャヒニアン博士らの研究者たち。博士らは、66歳以上の高齢者で、前立腺がんと診断された5万613人の医療記録を再調査した。その結果、男性ホルモンを減らす薬剤を使っている患者では、前立腺がんと診断されて5年以内に、背骨、腰、脚を骨折して入院した人の割合が、そのような薬を使っていない患者の2倍に達していた。お年寄りの骨折は、非常に危険で、命取りになることが多い。骨折すると、若い人と違って、治りがおそく、合併症も起こしやすい。老人ホームや病院で寝たきりになって、死に至ることが多い。とくに、腰の骨を折ると、お年寄りは、たいがい1年以内に死亡するという。アメリカでは、年に23万人の男性が前立腺がんと診断され、3万人が死亡している。しかし、多くの患者は、前立腺がんのために死亡したのではなく、直接の死因が他にあるケースが多い。その中には骨折のために死んだ人が相当いる、と研究者たちは見ている。現在、前立腺がんの40%が、「ルプロン」(Lupron)などといった男性ホルモン抑制剤を処方されている。とくに、前立腺がんが進行した患者では、男性ホルモン抑制剤を放射線療法と併用すると有効、といわれている。男性ホルモンは、骨や筋肉をつくり、丈夫にする働きがある一方で、前立腺がんの細胞の成長も促す。だから、男性ホルモンを抑制すると、がんの成長は抑えられても、骨が弱まることになる。この研究について、「ニュージャージーがん研究所」の泌尿器腫瘍部長、ロナルド・モートン博士は、「前立腺がんの治療の目的が、少しでも長生きすることであるなら、前立腺がん患者に男性ホルモン抑制剤と投与する前に、その功罪をよく考えなければならない。骨折で早死にしてはなんにもならない。男性ホルモン抑制剤を投与したら、患者の骨の密度をしばしば測定するなど、気をつけるべきだろう」とコメントしている。