2004年11月24日
テキサス州オースチンの美容外科医、ロバート・アーセク医師は、このほど、記者とカメラマンを招いて、カメラの前で、自分のおなかに針を刺して、脂肪を吸い出して見せて、こう説明した。「こうして吸い出した脂肪は、カリフォルニア州のある会社に送ります。そこでは私の脂肪を保存するとともに、そこから医学研究に役に立つ幹細胞を取り出すのです」。アーセク医師の実演は、10月上旬にペンシルベニア州ピッツバーグで開かれた「国際脂肪応用技術学会」(InternationalFatAppliedTechnologySociety)で論議された「幹細胞源としての脂肪」の前宣伝だった。幹細胞は、マスター細胞、万能細胞などとも呼ばれる未分化の細胞で、これをうまく誘導すれば、体の各部分の細胞につくりかえることができる、と言われ、いま、生物医学研究の花形となっている。その応用で、パーキンソン病、心臓病、など、さまざまな病気の治療に役に立つ組織を作り出すことができる、と期待されている。しかし、幹細胞は普通、体外受精で使われなかった胚から取り出すので、生命倫理上これを問題する人がいる。その点,これまで廃棄するだけだった吸い出しで脂肪から、幹細胞が採取できれば、こんないいこと言うことはない、とアーセク医師は言いたかったのだ。同医師の病院では、美容外科で吸い出した脂肪を毎年何トンと捨てている。「国際脂肪応用技術学会」は、設立されたばかの新しい学会で、その会長になった、ピーター・ルービン博士(ピッツバーグ大学)は、「とかく嫌われがちの体の脂肪を大いに役に立てたい」と話している。