2004年10月08日
患者が病院まで足を運ばず、医師が往診するわけでもなく、両者はコンピュータに向かって、メールで対話し、指示を出す。こんな“エレクトロニクスを介した診察”がいまアメリカで増えている。ハーバード大学医学部のトム・デルバンコ医師もその一人。毎日、数通のメールを患者から受け取るという同医師は、米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」最近号に「Eメール診断」について書いた論文を寄せた。その中で、同医師は、「人々は医師と直接面談するより、コンピュータに向かって話をする方が気楽な場合が多いようだ。権威の象徴のような白衣を着た医師に、恐れを感じる患者もいる。ふだんは医師には言いにくい事がら、例えば、セックスに関することなど、コンピュータならオープンな気持ちで話ができる」と書いている。また、同医師は、「電話で話をすると、急がないことでも患者と長々と話したりして、一日中それに振り回されたりするが、Eメールなら、不要不急な事がらは後回しにすることができる」と同医師はいう。また、医師の側も、処方せんを出したり、指示すしたりするさいに、メールなら、口で言うより、いっそう慎重になり、間違いも少なくなる、という。いまのところ、コンピュータ診断を行う医師は、一般のEメールを使っているが、病院によっては、プライバシーを守るために、特定のウエッブサイトをつくって、そを通じてだけ、患者からのメールを受け付けるシステムを取っていることろもある。
ボストンにあるベス・イスラエル病院では、外部から保護されたウエッブサイト「ペイシャントサイト」(PatientSite)ができていて、1万8000人の限られたメンバーがこれを使って、医師とのアポイントメントを取りつけたり、処方せんを受け取ったり、医師からの指示を受け取ったりしている。ある調査によると、アメリカの医師の4分の1は、なんらかの形でEメールを利用しているが、多くの医師は、Eメールでやり取りしていると、何だか、タダ働きをしている感じがする、という。
そこで、Eメールを利用する患者から料金を取るところが増えてきた、という。この論文の共著者で、やはりベス・イスラエル病院で仕事をしているハーバード大学医学部のダニエル・サンズ助教授によると、Eメール利用の患者には、年間100ドル(1万1000円)から数百ドルの定額を徴収しているケースが増えてきたという。ー「弁護士も会計士も、相談すると、時間で料金をとるのだから、医師がお金をとってもおかしくない」とサンズ助教授は述べている。健康保険会社も、医師がEメール診察はどうするのかの検討を急いでいる。健康保険会社「カリフォルニア・ブルークロス」では、Eメール診断を、往診に準ずる医療行為とみなして、いま、その支払い方法などについて試案を作って検討中だ。