2004年07月30日
人工甘味料で甘く味付けした飲み物をラットに飲ませる実験をしたら、ラットはえさを通常の3倍も多く食べた。この実験結果を人間にあてはめて、今日の肥満社会ができたのは、砂糖の代わりに人工甘味料を使うようになって、食欲が増進したからではないか、という新説
を出した研究者たちがいる。
この研究を行ったのは、パデュー大学(米インディアナ州)の研究チームで、学術誌「国際肥満ジャーナル」(InternationalJournalofObesity)7月号で発表した。それによると、研究者たちは、2つのラットのグループをつくり、そのうち、1つのグループには、砂糖で甘みをつけた液体を10日間飲ませた。もう一つのグループには、砂糖とサッカリンで味付けした液体をやはり10日間飲ませた。このあと、両グループに、砂糖味のチョコレートスナックと、通常のラットのえさを食べさせた。その結果、チョコレートスナックについては、両グループとも、ほぼ同量食べたが、通常のえさについては、砂糖とサッカリンで味付けした液体を飲ませたラットは、砂糖だけで甘みをつけた液体を飲ませたラットよりも3倍多く食べた。
これについて、同大学のスーザン・スイサーズ助教授(心理科学)は、人工甘味料で味付けされた液体を飲んだラットは、体のなかで、甘味とカロリー摂取抑制とのつなながりに混乱が生じたのではないか、と説明している。
その根拠はこうだ。人間を含めた動物は、甘いものを食べることによって、カロリー摂取を調節する。糖分がある程度体に入ると、体は、このあたりで食べるのをストップしよう、と生理的にブレーキをかける。つまり、そこで食べるのを止めるのだ。デザートにケーキを食べるのもそのためだ。ところが、甘いものの味が砂糖でなく、実体のない、いわばニセの甘味料(この場合はサッカリン)だとどうなるのだろうか。味は甘いのだが砂糖ではない、というので、体のなかで混乱が生じて、カロリー摂取の調節がきかなくなり、そのため、食べる量にブレーキがかからなくなる、と研究者たちは見ている。そこで、研究者たちは、今日の肥満社会をもたらしたのは、人工甘味料の普及が関係しているのではないか、とする新説を出したのである。
ここ数十年の間に、アメリカで、砂糖の代わりに使う種々の人工甘味料と、それをい使った飲料(ダイエットコーラなど)の消費が大きく伸びている。このことは、人々は、毎日の食べる量が調節できなくなり、知らず知らずのうちに、摂取カロリーがかえって増えたことに他ならない、というのだ。その根拠として、人工甘味料の消費量の増加と、肥満人口の伸びがほぼ一致している、と研究者たちは指摘している。
この学説に対して、反論もある。ワシントン大学(シアトル)のアダム・ドレウォスキー教授(栄養科学)は、「この実験で、ラットが3倍も食べた原因が、人工甘味料のためかどうかわからない。また、ラットでの実験を人間にあてはめることにも問題がある」と述べており、さらに、人間でくわしく調べ直す必要がある、としている。いずれにしても、肥満を予防するために、あるいは、カロリー摂取を制限するために、砂糖を減らして人工甘味料を使ったことが、かえって食欲を増進し、肥満を促進していた、となれば、今後、新しい視点からダイエット問題を考え直す必要が出てきて、大きな議論に発展する可能性がある。