2004年07月27日
病院は痛いところ、といって敬遠するが人は多い。とくに子どもは、医師や看護婦を見ただけで泣き出すことがある。言うことをきかない場合は、泣く子を押さえおさえつけて、注射針を刺し込む。子どもにはトラウマが残り、医者嫌いは決定的になる。米小児科学会は、3年前、「ペインフリー」(痛みのない医療)の方針を決定し、患者を不要な痛みから解放させるために、あらゆる方策を講じる、と通達を全米の小児科医に発した。このなかで学会が強調しているのは、医師は、患者が痛みを感じることを事前に予測し、その痛みの程度も考慮して、それを和らげるために、気持ちを落ち着かせるような環境をつくり、子どもの両親にも参加も求めて、痛みを軽減するために最大限努力しなさい、ということだ。この小児科学会の方針を受けて、その後、全米各地の子ども病院では、ペインフリーのために、あの手、この手の方策が進められている。オハイオ州にある「アクロン子ども病院」(AkronChildren'sHospital)では、医療処置を受ける子どもを痛みから解放させるために、あるいは、手術後の子どもの気持ちをなだめるために、はり(acupuncture)やアロマセラピー(aromatherapy)を取り入れている。カリフォルニア州オークランドにある「子ども病院・研究センター」では、子どもの患者にできるだけ痛みを与えないで、快適な状態で医療が受けられるようにするため、病院スタッフによる特別のチーム「チャイルドライフ」を結成した。これまでは、子どもが治療や手術を受けるさい、子どもを親から引き離して施術室に入れ、締め出された親は、部屋の外で、泣き叫ぶ子どもを案じるだけだった。しかし、最近では、医療に支障のない限り、親や保護者も部屋に入れて、子どもを安心させ、できれば親に抱かれながら、子どもが処置を受けられるようにするケースも増えてきた。MRI(核磁気共鳴映像法)で脳をスキャンするには、45分間くらいかかる。その間、子どもはじっとしているようにいわれるが、これがなかなか難しい。そこで、子どもに、宇宙飛行のバーチャルリアリティを体験させる病院が出てきた。病院のスタッフが、「ファイブ、スリー、トゥ、ワン、発射!」と読み上げると、子どもは仮想の現実に浸り切る。その間にスキャンが完了するというわけだ。このバーチャルリアリティは、MRIだけでなく、痛みをともなう長時間の治療などにも使える。子どもだけでなく、大人にも、治療中気を紛らす効果があるだろう。バーチャルリアリティだけでなく、CDやテープで音楽や心を鎮めるサウンドを上手に聞かせるだけでも、痛みを緩和させる効果がある、という。ペインフリー・プログラムを推進している麻酔学者のジョー・クラベロ博士は「ひと昔前には、子どもというのは、大人ほど痛みを感じないものだ、という誤った考えがあった。病院で子どもが泣き叫ぶのは当たり前、と考える時代は去った。工夫次第でペインフリーは達成できる」と話している。