2004年05月09日
しまった、と思っても、翌朝飲めば妊娠を回避できる。これが「モ-ニングアフタ -」でいわば“緊急避妊ピル”である。
そのモ-ニングアフタ-を、だれでも、いつでも、自由に買える店頭販売薬にした い、と、「プランB」(PlanB)というモ-ニングアフタ-のメ-カ-「バ-・ラボ ラトリ-ズ」(BarrLaboratories)からFDA(米食品医薬品局)に申請が出されていたが、FDAは、5月6日、これを拒否する通告を同社に送った。 この決定は、はなはだ異例のことだ。
というのは、モ-ニングアフタ-を、医師の処方せんが要らない店頭販売薬にする ことについては、昨年(2003年)、専門家によるFDAの諮問委員会が、圧倒的多数で承認していたからだ。通常FDAは、その委員会の決定通りに最終決定するのが当たり前になっている。
いわば身内の専門家が、店頭販売には問題なし、という見解を出していたのに、それを覆したわけで、そこには、よほどの事情があったに違いない、とだれもが勘ぐる のは当然だ。
「ちょっとおかしい」「政治が介入したにおいがする」と、女性の権利を主張する勢力だけでなく、政治家の一部からも、批判の声が上がっている。 つまり、妊娠中絶に反対する保守勢力の側に立っているブッシュ政権が、FDAに 圧力をかけたのではないか、というのだ。
事実、モ-ニングアフタ-の店頭販売を拒否せよ、とのロビ-活動が盛んに行われていたことはだれもが知っている。 これに対して、FDAは、店頭販売拒否の理由について、「年端のいかない少女が モ-ニングアフタ-を使った場合の安全性が確認されていないので、これは、医師の指示に従って使う必要がある。したがって、自由販売を認めなかった」と、拒否の理由を説明している。
そして、FDAは、メ-カ-に対して、今後、16歳以下の少女が使った場合でも、モ-ニングアフタ-は安全である、という試験結果を出すか、安全に配慮した工夫がなされれば、自由販売にする道は残されている、と言っている。 さらに、今度の決定に、政治圧力はなかった、と否定している。
モ-ニングアフタ-賛成派は、もし、モ-ニングアフタ-が自由に買えるようにな ると、年300万件と言われている「望まない妊娠」を半減させることができ、中絶の数もそれだけ減らすことができて、女性の健康に良い結果をもたらす、と主張して いる。
モ-ニングアフタ-賛成派の一人、「生殖健康技術プロジェクト」のクリステン ・ム-アさんは「このFDA決定は、モ-ニングアフタ-は安全である、という大多 数が認めている科学的根拠を、あからさまに軽視している。ブッシュ政権は、アメリカ人女性が、タイミングよく、安全で確立された第2の避妊のチャンスを選ぶ権利を 奪った」と攻撃している。
また、民主党の大統領候補、ジョン・ケリ-上院議員(民主党、マサチュ-セッツ 州選出)は、この決定が伝えられると、ただちに、「今のホワイトハウスは、すでに 国民に幅広く支持されている健全な医療を犠牲にしてまで、自分の政治的な主張を優先させている」と非難の声明を出した。
これに対して、モ-ニングアフタ-の反対勢力の一つである、「米いのちの同盟」 (AmericanLifeLeague)のジュリエ・ブラウン会長は、「モ-ニングアフタ-の自由販売は認めないという、こんどのFDAの決定は一応支持するが、これではわれわ れの満足にほど遠い。FDAは、モ-ニングアフタ-なるもの自体の存在を認めるべ きでない。次のステップは、モ-ニングアフタ-・ピルをこの世の中から放逐するこ とだ。これが、アメリカ人女性とその子どもにとって、一番いいことなのだ」との声明を発表している。 なお、モ-ニングアフタ-・ピルは、基本的には、経口避妊薬と化学的成分は同じ だが、使われているホルモンの用量を高めてある。セックスの後、72時間以内にモ-ニングアフタ-を使えば、89%の成功率で妊娠を回避できる、という。 世界でも、100か国以上がモ-ニングアフタ-を承認しており、うち、33か国で、医師の処方せんなして買えるようになっている。