2004年02月25日
腫瘍は、自ら血管をつくって、そこから栄養分を取り込みながら成長する。
そこで、その血管の働きをストップさせてやれば、腫瘍は栄養を補給できなくなるので、生きて行けなくなり、死滅するだろう、という考え方にもとづいてつくられた、これまでにない新しいタイプの抗がん剤が、いよいよ実用化されそうだ。
この薬は、バイオテクノロジ-会社の大手、「ジェネンテック」(Genentech )が製造した「アバスチン」(Avastin )。
血管形成阻害剤(angiogenesis inhibitor)と呼ばれるアバスチンは、体内で、「血管内皮成長因子」(VEGF、vascular endothelial growth factor)というたんぱく質を攻撃する。
これは、腫瘍が血管を形成するさいに欠かせない物質で、これを攻撃して破壊すれば、腫瘍は栄養の補給路を断たれ、餓死する。
アバスチンは、注射で投与される。すでに、大腸がん、じん臓がん、非ホジキンリンパ腫、などのがん患者で試験的に使われている。
昨年6月(2003年)シカゴで開かれた米臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology )の年次総会で発表されたところによると、広い範囲に広がった大腸がんの患者を対象に行った試験では、アバスチンの投与を受けた患者は、従来の化学療法剤だけを受けた患者より、生存期間が4ヵ月強長かった。
血管形成阻害剤の先駆者で、ハ-バ-ド大学医学部のジュダ・フォ-クマン博士(細胞生物学)は、「4ヵ月長生きしたというと、大したこととは思えないかもしれないが、10年前には、進行した大腸がんにはつける薬がない、と言われていたことを思うと、大きな進歩だ」とコメントしている。
そして、同博士は、「アバスチンなどの血管形成阻害剤には、これまでの抗がん薬ではできなかった治療効果が期待できる。近い将来、がん治療に取り入れられるようになるだろう。アバスチンの適用範囲は、今後ますます拡大して、卵巣がん、乳がん、さらに、がんではないが、お年寄りに多い眼病である黄斑変性症(maculardegeneration )にも使えるようになるだろう」と、予測している。
黄斑変性症は、お年寄りの失明の原因として最も多い。視野の中心部がみえなくなる病気で、網膜につくられる新しい血管が問題になる。そこで、アバスチンのような血管形成阻害剤が有効だろう、というのだ。
1月27日、ニュ-ヨ-クで開かれえたニュ-ヨ-ク科学アカデミ-の会合では、専門家の間で、アバスチンのことが話題となり、FDA(米食品医薬品局)は、今春にも、アバスチンを認可するのではないか、という見通しが強かった。